あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
それにしても広すぎるこの家に、少しそわそわした。

前の家でも三人で暮らしていたが、ここは三人で住むには部屋が余り過ぎている。
かといって物置部屋が多い訳でもないし、私たちが部屋を借りても、あと一つ、何も使われていない空き部屋が存在するくらいだ。

こんなことを、他人である私が聞くのもなんだけれど、ずっと不思議に思っていたので、私は夕食の手伝い中、千佳さんに聞くことにした。

「あの、ここの家、すごく広いですよね。それに使われていない部屋もあるし…」

その言葉に、千佳さんは苦笑した。

「やっぱ、そう思うよなぁ。…私な、子供がめっちゃ好きやねんか。だから、子供五人くらい育てる予定でここを買ってんけど、なかなか妊娠できへんくてなぁ。それでも、翔琉が生まれて、ほんでまた子供できたりしたけど、ダメになっちゃってな…」

予想していた返答より、かなり重い事実に、私は思わず謝ってしまった。
そんなどうでも良い疑問のために、他人の事情に首を突っ込まなければ良かったと後悔した。

「全然大丈夫やで!?……だからこそ、光希歩ちゃんや、海光ちゃんがここに来てくれて嬉しかってんから」

元気な声を聞いて、大人とは凄いものだと思った。
たとえ、どれだけ小さな命でも、失った重みは変わらないはずなのに。
それを感じさせない笑顔を見せてくる。
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