あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
私だけ気まずさがマックスになり、台所は包丁の音やグツグツと煮物を煮る音しか聞こえなくなった。

そこへ、階段から勢いよく下りてくる音が混ざり込む。

「お姉ちゃん!うち、明日潮干狩りに行くねんでー!いいやろ〜!」

海光は嬉しそうに、遠足のしおりを見せてきた。

「あ、それでな、先生が念の為に携帯番号を親に伝えといてくださいって。担任の先生、新任やから慎重みたいやわ」

海光のおかげで話題が逸れた。
千佳さんが「電話前のコルクボードにでも貼っといてー」と言ったので、海光は扉横すぐの電話台の前に立った。

その先には、大きなテレビがひとつと、二人がけの白いソファーがドンと置いてある。

リビングとダイニングが繋がっている広い部屋。
キッチンから、正面にテレビが置いてあるため、最近は千佳さんと一緒に、朝のドラマを見ながら朝食の片付けをしている。
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