あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
最後に汚れをまとった泡を水で流した。
また他に水場を掃除するところはないかな、と思いながら手を洗っていた。

ジャージャーと水の流れ落ちる音。
静かすぎるこの空間に、全く別の音が近づいてきた。

──────ドンッッ!

下から真上に一瞬突き上げられた。
無意識に体が硬直する。
覚えてる。忘れられないこの恐怖。
背筋が凍りついた。

─────カタカタカタッ ───ゴオン!!

「………っ!!」

声にならなかった。

─────ガタガタガタガタ!!

左右に激しく揺らされる。
地面に弄ばれている気分だった。
よりによってここはキッチン。
勢いよく流れる水を放って、私は手で頭を覆い、小さく小さくなってしゃがんだ。
< 164 / 240 >

この作品をシェア

pagetop