あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「海光は!岸元海光は!?無事なんですか!?今どこにいるんですか!!」

運動したわけでもないのに、息がちゃんと吸えなくて苦しい。
でも、海光になにかあるほうがもっと苦しくて、辛くて。そんなの耐えられない。

きっと、海光をも失ってしまったら、私は私でいられなくなる。この世に存在することも、絶対に出来ない。
またあの日と同じ出来事で、大切な人を失い、また私だけ取り残されるなんて。

《大丈夫ですから、落ち着いてください》

大丈夫?
何が大丈夫だっていうの?
この状況で落ち着けって…?

「この状況で落ち着けるわけないでしょ!?ねぇ、皆どこにいるのよ!」

もし今、海にいるのなら、今すぐに逃げて。
小高い丘とかじゃない。もっともっと高いところ。
でないと、あの日のように……!!

《大丈夫です、お母さん。現在、教員で話し合い、近くの建物の屋上に避難しました》
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