あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
すると、一瞬間があったあと、私よりも随分落ち着いた海光の声が聞こえた。
《お姉ちゃん、ほんまに大丈夫やから。テレビ見て?津波はこーへんよ》
その声を聞いた私は、息を切らしながらテレビリモコンを手に取る。
画面には、朝のドラマのチャンネルのままになっており、地震のことで持ち切りになっていた。
そして画面上部に流れる文章には『津波の心配はありません』とハッキリ書かれている。
私は膝から崩れ落ちた。
力が抜け落ち、受話器から手が離れる。
床についた左手がやっと痛みの信号を送ってきた。
千佳さんが代わりに受話器を取り、「余震に気をつけて帰ってきてね」と言って切ったようだ。
やっとしっかり見えてきた、家の様子。
涙と汗が滴り落ちた床。
ザアザアと、未だ流れっぱなしの水道。
割れた食器に、それを踏んで切ったらしい私の血色のある左足。
床や電話台は私の手足のせいで血まみれ。
ああ、怒られる。
もうこの家にはいられない。
でも、私はそうなっても構わないと思った。海光がいれば、どこへだって行ける気がしたから。
《お姉ちゃん、ほんまに大丈夫やから。テレビ見て?津波はこーへんよ》
その声を聞いた私は、息を切らしながらテレビリモコンを手に取る。
画面には、朝のドラマのチャンネルのままになっており、地震のことで持ち切りになっていた。
そして画面上部に流れる文章には『津波の心配はありません』とハッキリ書かれている。
私は膝から崩れ落ちた。
力が抜け落ち、受話器から手が離れる。
床についた左手がやっと痛みの信号を送ってきた。
千佳さんが代わりに受話器を取り、「余震に気をつけて帰ってきてね」と言って切ったようだ。
やっとしっかり見えてきた、家の様子。
涙と汗が滴り落ちた床。
ザアザアと、未だ流れっぱなしの水道。
割れた食器に、それを踏んで切ったらしい私の血色のある左足。
床や電話台は私の手足のせいで血まみれ。
ああ、怒られる。
もうこの家にはいられない。
でも、私はそうなっても構わないと思った。海光がいれば、どこへだって行ける気がしたから。