あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
しかし、千佳さんは何も言わず水道を止めたあと、救急箱を持ってきた。

「怖かったな。ごめんな、一人にして。手当てしよっか」

その言葉に、私はまた無意識に涙を流していた。

怖かった。
あの日のように大切な人を、海光を失うのかと思うと、心臓が止まってしまいそうになった。怪我をした部位よりも、ずっと痛くて苦しかった。

血の繋がらない妹でも、海光はたった一人の私の家族だ。
失いたくない、大切な宝物。
何ものにも変えられない。

きっと、あの場にいる海光のほうが不安だったろうに〝落ち着いて〟と言わせてしまった。
不安を煽るようなことをする私を、どんな過去をもっていても姉だと、家族だと言ってくれた。

失いたくない、大切な家族。
いつか、今手当てをしてくれている千佳さんや、私を支えると言ってくれた翔琉がそんな存在になって欲しいと思った。
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