あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

そんなしんみりとした空気を先に破ったのは広音だった。

「翔琉、その…話だいぶ変わるけど…時間大丈夫か?俺は家近いからいいけど、もうすぐ十一時半やで」

「え?」

慌てて、腕についている黒いものに視線を落とす。
それを見ると時刻は午後十一時二十三分。

「や、やばい!ありがとな広音!じゃあな!」

広音が「バイバイ」と言う声も、微かにしか聞こえないくらい勢いよく飛び出していた。


絶対に怒られる。
今日はあのマンションも素通りしよう。きっと今日も会えるはずないのだから。


そう思いながらマンションの前を通り過ぎようとした。
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