あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
傷つくのが怖いと、恐れているのだろう。
これは憶測。
光希歩のその考えだって憶測だ。

「光希歩は、周りをよく見てる。周りの気持ちを考えられる。でも、そうじゃないねん。光希歩はただ、周りの気持ちを憶測に考え、それが自分に及ぼす被害の予測を見極めていただけなんや。ほんまは気持ちなんて読めへんのに。
それは誰しも同じやで。
光希歩、自己完結したら、今まで生きてきた人生の何倍もある残りの時間がもったいないで。
皆が皆、白い目で見ているわけじゃない。ほんまは手助けしたいのに、どうしていいかわからんくてタイミングをみたりしてるんかもしれん。
下ばっかりじゃなくて、勇気だしてもう一回、前向いてみよう?
もっと色んなところから物事を捉えてみよう?
難しくても、前を向くことは何度でもできるんやから!
振り返るだけじゃなくて前を向いて歩き進もう?どんだけゆっくりでもいい。それで大丈夫やから!
俺が。絶対、そばにおるから!」

俺が絶対そばにおる、なんてちょっとカッコつけてしまったかもしれない。俺は必死にそれを誤魔化そうとする。

「いや、その…。別に、歌手になって欲しいわけちゃうで。他にまあ、専業主婦…いや!家政婦とか!」

完全に墓穴を掘った。
専業主婦って誰の妻のことだよ、と心の中でつっこむ。
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