あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

歌に関してはそれほど大変ではなかったが、翔琉に「次は面接の練習する?」と言われ、空き部屋で二人、練習してみることになった。

「ノックは三回な。で、失礼しますって言うて入って、丁寧にドアを閉めてから明るく挨拶と名前言うねんで」

「わかった」

じゃあやってみて、と言われて私は廊下に出る。

「コンコンコン」

「どうぞ」

「失礼します。……おはようございます、岸元光希歩といいます。……よろしくお願いします…?」

「よろしくお願いします。ではおかけください」

翔琉の面接練習が、かなり本格的なので自然と身を縮こませてしまう。
再び、失礼しますと言い、用意されてあった椅子に腰をかけた。

「どうして芸能界を目指そうと思ったんですか?」

「え?えっと…歌手になりたいからです」

「では、なぜ弊社に応募されたんですか?」

「ええ…。と、当日に結果が出ると聞いたので…」

「そうですか。趣味や特技はなんですか?」

「趣味?……家事です」

そう言うと、翔琉が一瞬噴き出して、咳払いをし、また同じ表情に戻った。
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