あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
受付には綺麗なお姉さんが二人並んで立っていた。

翔琉に教わった通りの言葉を述べようとする。

「あ……あの…」

それでも、相手は全くの他人。
言葉が喉につっかえて出てこなかった。

「はい?」

私は俯いてしまった。
そこには、ズボンの裾から微かに見えるミサンガがある。

お願い。声を出して。
ねぇ私、頑張って!!

「お、オーディションに応募してた…岸元光希歩といいます………」

最後の方は声が小さくなりながらも、一気に答えた。
何年ぶりだろうか。自分から他人に話しかけたのは。

「オーディションですね。では、あちらの控え室でお待ちください」

「…はい」

私は案内された控え室に入った。
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