あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
今ならなんでもできる。そう思って、私は面接会場と書かれた部屋の戸を三回叩いた。
どうぞと聞こえ、私は失礼しますと言って中に入った。
扉を閉め、お辞儀をし、顔をあげた。
面接官が三人。
その中の一人は女性で、みんなが私を見ていた。
そして、私も面接官の顔を見る。
しっかりと目が合った。
目玉が六つ、私のことをじっと見ている。
『おはようございます。岸元光希歩です。よろしくお願いします』
頭の中に言葉が浮かぶ。
でもそれは口に出してはいなかった。
さあ口にだせ、と脳が司令をしているのに、どこかの部位が反抗して言うことを聞かない。
その部位は、心臓部なのか、視界から得られる他人の目なのか、わからないが一向に口は動こうとしない。
「えっと…名前は?」
面接官の一人が、私に向かってそう話しかけている。
話しかけられているよ?
声に出して。
練習したじゃない。
ほら、早く。
何してるの?
もう一人の私に、何度も何度も問いかける。
やはり返事はない。
…当たり前だ。
だって自分は一人しかいないのだから。
さっきまであった謎の自信は、一ミリたりとも無くなっていた。
どうぞと聞こえ、私は失礼しますと言って中に入った。
扉を閉め、お辞儀をし、顔をあげた。
面接官が三人。
その中の一人は女性で、みんなが私を見ていた。
そして、私も面接官の顔を見る。
しっかりと目が合った。
目玉が六つ、私のことをじっと見ている。
『おはようございます。岸元光希歩です。よろしくお願いします』
頭の中に言葉が浮かぶ。
でもそれは口に出してはいなかった。
さあ口にだせ、と脳が司令をしているのに、どこかの部位が反抗して言うことを聞かない。
その部位は、心臓部なのか、視界から得られる他人の目なのか、わからないが一向に口は動こうとしない。
「えっと…名前は?」
面接官の一人が、私に向かってそう話しかけている。
話しかけられているよ?
声に出して。
練習したじゃない。
ほら、早く。
何してるの?
もう一人の私に、何度も何度も問いかける。
やはり返事はない。
…当たり前だ。
だって自分は一人しかいないのだから。
さっきまであった謎の自信は、一ミリたりとも無くなっていた。