あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
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気がついた時、目の前には白い天井と、いるはずのない千佳さんがいた。
「あ!光希歩ちゃん、大丈夫!?貧血で倒れたって電話あったんやけど」
そこで初めて、自分は倒れたのだと知った。
よく見ると、ここはオーディション会場の一室らしく、私はソファーで寝かされていたようだ。
「あ!…め、面接は…」
すると、気まずそうな表情をする千佳さん。
言われなくても、結果はわかりきっていた。
「そう…ですか…」
千佳さんは何も言わずに、スーパーの袋からほうれん草のお惣菜と割り箸を取り出して渡してきた。
「ほうれん草は貧血にいいんやで。これ食べたら帰ろっか」
私は頷いて、それを口に運んだ。
でも、美味しいとか、わざわざ買ってきてくれた千佳さんに申し訳ないな、と思う気持ちよりも、どこか悲しくてイライラする気持ちの方が強く私を支配していた。