あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
…急に気恥ずかしくなった。静まり返った部屋に二人、視線を泳がす。
それと同時に、私ばかり応援してもらって申し訳ない気持ちが募ってきた。
「…翔琉は?翔琉の夢。私も応援したいし、支えたい」
すると翔琉は少し頬を赤らめて、口を開いた。
「俺な、ずっと自分の夢なかってん。なんとなく就職できればいいかなって。でも、光希歩に出会って過去のこと聞いて、何をしたいか、ちょっとずつ見えてきてん」
翔琉は少し間を置いて、真剣な表情で私と視線を絡ませた。
「俺、小学校の教師になりたい。光希歩と同じで、ちゃんとこれから先の世代に伝えていきたい。それと…光希歩みたいに、いじめにあう子が一人でも減るように」
私が発端だったんだ。
気付かぬ間に、翔琉に夢の鍵を与えることができていたんだ。
ほんの少しでも、翔琉の力になれて良かったと、私は笑みをこぼす。
「頑張ろう。二人で支えあって、夢を叶えよう」
手を取り合って、しっかりと握った。
未来へと歩み出す、二人の小さな笑い声が部屋中に響きわたる。
きっと叶う。
私たちの本気の夢。
足元のミサンガは、満を持すように綺麗に結ばれていた。