あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。


大丈夫。
今までたくさん努力してきた。
たくさんの人に支えてもらった。
私ならできる。
私が私を信じてあげなくてどうするんだ。
きっと、上手くいく。
失敗したって、また挑戦する。
何度だって、どんな壁にだって自分から立ち向かっていこう。

「行ってきます!」

今まで小さかった私の声が、大きな家に響き渡った。
すると、翔琉が玄関まで見送りに出てきて、こんなことを言う。

「え、光希歩…ほんまにその格好で行くん?」

心配そうな表情で見つめてくる翔琉。
なにが言いたいのかよくわかる。

「…うん。前に進みたいから」

迷いはなかった。
あの日、人工的な光のしたで翔琉と話した時と同じショートパンツ。

「そっか。頑張ってな!」

頑張るよ。翔琉のその言葉で頑張れる。
私を、前に押し出してくれて、ありがとう。

そうして私は、一人でオーディション会場に向かった。
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