あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
しばらくして、小さな鞄を肩から下げた光希歩と一緒に外へ出た。
長い長い真っ直ぐの道を、二人並んでゆっくり歩く。
出掛けようとは言ったが、これは…デートだよな。
光希歩はそんなこと、これっぽっちも理解していないのだろうけれど。
不自然な緊張を解こうと、当たりを見回した。
「あ、見て、光希歩。もうタンポポ咲いてんで!」
道路の脇から芽吹く小さな花。
本当だ!と言ってしゃがみ込んだ光希歩。
こんなことを繰り返したら着かないじゃないか、とは思わない。
俺たちのペースで、ゆっくり歩いていけば、きっと辿り着く。
光希歩は振り返り、俺を見上げた。
下ろした長いストレートの髪が、綺麗に風に乗る。
「あ!翔琉、飛行機雲!」
彼女が指差す方向は、高い高い青空に道しるべのごとく現れた一本の筋。
「ほんまや!駅の方やで!」
「行こう!」
笑いながら、少し駆け足で進み出した。
どんどん進むうちに、以前、光希歩の住んでいたマンションが徐々に見えてくる。