あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
光希歩の瞳からは、虹ではなく、虹色の雨がこの世に降り注げられた。
視線はズレない。
静かな砂浜に、何度波の音が押し寄せてきただろう。
言葉を選ぶようにして、光希歩は口を開いた。
「私は、カクを忘れることができないし、忘れるつもりもない。でも、翔琉は真っ暗だった私の世界に光を宿してくれた。いつの間にか、話し相手から大切な人に…大好きな人に変わってた」
大好きな人。
そう、光希歩の口から出てきた時、もう波にさらわれても良いくらいの気持ちだった。
「私も…翔琉のことが好きです。でも、これだけは約束して。私より先に死なないで。私を置いて、いなくなるのはやめて…」
光希歩が一番嫌いなこと。
それは、大切な人が自分を置いて亡くなることだ。
安易に波にさらわれて良いなんて思ってはいけない。
「約束する。絶対に、生きて生きてずっと光希歩を支え続けるから」
そう言うと、光希歩は嬉しそうに、心からの笑顔で笑った。
雨が降り続けた世界に光が射し、虹がかかる。