あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
目には見えない、雨上がりの虹の下、光希歩は立ち上がり、波の方へと歩いていった。
大丈夫かと俺も立ち上がる。
「お母さん。私、歌手のスタートラインに立ったんだよ。いつか、お母さんみたいに周りがキラキラ輝くくらいの歌を歌って、私の思いを世界に伝えるね」
海に向かって一人、光希歩は呟いた。
「お父さん。私、お父さん似だったみたい。やりたいことのためなら、なんだってできるものなんだね」
「海光。短い期間だったけど、私を本当のお姉ちゃんにしてくれてありがとう。海光のおかげで、海光になった海美ちゃんはここにいるんだよ」
「アズちゃん。初めて声をかけてくれた時、すっごく嬉しかったよ。一緒にいて、すごく楽しかった。アズちゃんみたいにフレンドリーになれるよう頑張るね!」
「…カク。カクに…返事できなくてごめんね。カクのおかげでわかったよ。伝えたいことは、ちゃんと、すぐに伝えるべきなんだって。告白、嬉しかったよ!でも…前に進むね…」
一瞬俺を振り返った光希歩。
すぐにまたキラキラと輝く海を見つめた。
そして、聞こえてきた。
初めて聞く歌。
二次審査のために作ったものなのだろうか。
子守歌とはまた違う。
今までよりも、もっともっと輝く光希歩の世界に、俺は溶け込んだんだ。