あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
ロータリーの電灯が無駄に光を放つため、星なんてものはほとんど見えやしない。
今日は、昨日光希歩が言った〝偶然〟が起こるだろうか。
ちなみに今、いつもの場所にあの子はいない。
さすがに昨日ほど遅くなるのは、家の都合上俺の身が危ないため不可能だが、もう少しだけなら待てる。
プワーンと音を立てて一本の電車が駅に入ってきた。
ほんの数人がスカスカのそれから降りて、とぼとぼと帰っていく。
くたびれた顔のサラリーマン。
歩きスマホをしている金持ちそうなおばさん。
酒に寄っているのか、足元がおぼつかない様子で必死に帰るおじさん。
あんな風にははなりたくないな。
そう思ってしまった。
子供が地面に咲く小さな花を見つけた時のような、ほんの少しの喜びも忘れてしまって。
人生にくたびれた顔をするのは。
嫌だ。
いずれ同じ道を辿るとは分かっていても、ポジティブ思考の俺には、あんな顔になる理由が分からない。
もっと楽しいこと、幸せなこと、少しでも見つけることはできないのか。
空を見上げず、地面の花にも気付かず、ただ自分の家だけを目指して。
そんなの、あんな酷い顔になるのは当たり前じゃないか。
俺は絶対この思いを見失わないで生きていきたい。
そう思った時、上からカラカラッといつもの音が聞こえた。