あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「光希歩。その日だけ。その日だけでいいから、下に下りてきてくれへんかな…」
まただ。
別に怒っているわけじゃない。
でも、どうして断っているのに、何度も頼んで来るの?
「どうして?」
わからない。翔琉が下に下りてきてほしい理由が。
「いや…その…プレゼント、渡したいなあって」
プレゼント?
私に?
あの日に?
「やっぱ無理か?」
翔琉はこんな私に、プレゼントを渡したいって?
そう。
どうしても翔琉が下りてきてほしいと言うのなら、私は証明してみせる。
他人は信用できないと。
私は間違っていないと。
翔琉が私の本当の姿を見て、少しでも、過去の人達と同じ顔をするならば、私は二度と翔琉に会わない。
二度と他人に関わらない。
でも。
もし。
もしも、翔琉が私の姿を受け入れてくれるのなら。
その時は。
「いいよ。下りる。
あと、翔琉が私の本当に欲しいモノをくれたら…。その時は、私の過去、全部話すから。
だから、少し早めに来てくれないかな…」
翔琉はまた、全身から花を散らせるような表情をしたが、すぐに真剣な顔になった。