あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「光希歩がほんまに欲しいもんは、俺にはわからへん。けど。それが今、叶わんくても。いつか叶うように…」
差し出された小さな紙袋の中身は、取り出さなくても見ることができた。
透明な袋に包まれ、黄色、オレンジ、白で編まれた可愛らしいミサンガ。
「ミサンガって、切れたら願い事叶うって聞いたから…」
願い事…?
私が本当に欲しいものが。
ミサンガが切れたら、叶う?
「……私の願いなんて…一生…叶わないのよ…」
私の願いは。そんなに簡単に叶わない。
簡単なんてものじゃない。
永遠に叶わないんだ。
いつの間にか、翔琉の手を振り払うこともやめ、頬をつたう涙も止まらぬまま、私は泣き崩れていた。
翔琉が私を優しく支え、すぐそばにあるベンチに腰を下ろす。
「もう一度会えたら、とか…っ。あの日に戻れたら、とか…っ。そんなの。ミサンガが切れたところで…。叶わない…っ」
こんな、胸の内から溢れてきた言葉なんて、翔琉に意味がわかるはずないのに。
溢れ出したそれは、もう私の中に戻ってきてはくれなくて。
気がつけば、私の口からは、大好きで大嫌いだった過去の出来事が語り始められていた。