あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
二〇〇九年、十二月の終わり。
私たち家族は福島の沿岸部へ引っ越した。
生まれ育った東京や、多くはないが確かにいた仲の良い友達とも別れ、見ず知らずの土地についた。
そこは、潮風が強くぶつかり東京よりも肌寒く感じる場所だった。
それでも、その場に立った私は、視界の中にどこまでも広がるきらめいた世界に吸い込まれた。
今日の世に別れを言うようにゆったりと沈んでいく大きな太陽。
それを全力で映し出し、溢れんばかりに光を反射する美しい海。
綺麗だけじゃ例えきれない。
白い砂浜から、透明、エメラルドグリーン、空色、瑠璃色と。
私から離れるにつれ、表情を変える。
瑠璃色の奥に空色が見えると、そこは浅い場所なのだろうな、と自然に理解することができた。
白くきらめく波が私の足元に優しく近付いてくる。
都会の高いビルに囲まれた狭い世界とは全く違った。
自然で溢れていた。
私の口から漏れ、空に向かって立ち上る白い吐息でさえ、輝いて見える。
初めて海に来た私は、ただじっと、そんな世界を見つめていた。