あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
荒井先生は、何事もないように堂々と戸を横に滑らせて教室に入る。
私も続いて教室に入った。
クラス内の人数は二十人ほど。
それ全ての視線が私に突き刺さる。
「はい!日直さん!号令がげで」
「起立ー」
ガタガタと音を立て、見知らぬ人たちは一斉に立ち上がった。
「礼!」
「「おはようございます」」
私は戸惑いながらも、目の前で頭を下げる人たちと同じく、ぺこりと頭を下げた。
そして皆は席につく。
「はい。今日はみんなにお知らせしてだ通り、転入生がやって来だよー」
先生は「自己紹介してぐれる?」と小声で私に言い、そのまま黒板を向いて私の名前らしきものを書き出した。
たくさんの視線が集中しているのがわかった。
それでも勇気を振り絞り、前日、お母さんと練習した通りのことを言うことができた。
「東京から来ました。岸元光希歩です。もうすぐ弟か妹が生まれます。よろしくお願いします」
途中、声が震えているのがわかったが、私に集まる視線の元では当たり前のように拍手が巻き起こる。