あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

荒井先生は、何事もないように堂々と戸を横に滑らせて教室に入る。

私も続いて教室に入った。

クラス内の人数は二十人ほど。
それ全ての視線が私に突き刺さる。

「はい!日直さん!号令がげで」

「起立ー」

ガタガタと音を立て、見知らぬ人たちは一斉に立ち上がった。

「礼!」

「「おはようございます」」

私は戸惑いながらも、目の前で頭を下げる人たちと同じく、ぺこりと頭を下げた。

そして皆は席につく。

「はい。今日はみんなにお知らせしてだ通り、転入生がやって来だよー」

先生は「自己紹介してぐれる?」と小声で私に言い、そのまま黒板を向いて私の名前らしきものを書き出した。

たくさんの視線が集中しているのがわかった。
それでも勇気を振り絞り、前日、お母さんと練習した通りのことを言うことができた。

「東京から来ました。岸元光希歩です。もうすぐ弟か妹が生まれます。よろしくお願いします」

途中、声が震えているのがわかったが、私に集まる視線の元では当たり前のように拍手が巻き起こる。

< 48 / 240 >

この作品をシェア

pagetop