あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
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「はい、翔琉遅刻〜!
バツとして十一時コースね〜!」
マジか…。
十一時コースとは、俺の塾にある遅刻防止制度で、授業後、十一時まで自習するというもの。
もちろん、希望する者も自習は可能だが、今まで誰も十一時まで残りたいと言ったものはいない。残るとしても大抵十時過ぎまでだ。
全速力で家に帰り、弁当と塾のセットだけを持ってすぐに塾へと向かったのは良いものの、結局二分オーバーしてしまった。
そんな俺に対して勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ、鬼のようなバツを与える女性塾長の水田。
中学の時からこの人は鬼だ。
「ハハッ。翔琉…。七時って言うたやん…」
笑い声を必死でこらえるように、小刻みに震えながら笑っている友人の早川 広音(ハヤカワ ヒロト)。
「うるさいわ…自転車パンクしたんやって…」
「へ〜〜。ま、十一時まで頑張れよ〜〜!はははっ!」
〰️〰️〰️くっそぉ…。
イケメンで爽やかに笑う広音を軽く睨みつけながら、自分の席につき、そのまま授業を受けた。