あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
クシャッと笑うその顔は、美少年という文字が良く似合う。
相変わらずだね、と言うかのように前に並ぶ人達がこちらを向いて微笑んできた。
「えっと…カクくん…?」
「カクでいい」
「じゃあ、カク!よろしくね」
「おー!皆!岸元サンのこど、これがらはキホちゃんっで呼ぶべ!」
前の方を向き、大きく高い声でカクが叫んだ。
キホちゃん?という声があちこちから飛び交う。
どうすれば良いのかわからない私は、おずおずと視線を上履きにずらす。
「カクっだらぁ…。もう。…キホぢゃん、だな。これがらよろしぐ!」
アズちゃんは呆れた様子で、皆に聞こえるよう私に呼びかけた。
その影響があってか、周りの人達も「よろしぐ!」と口々に声をかけてくれた。
その時の私は、再び前を向くことなんて簡単なことだった。
「ありがとう!よろしくね!」
そう笑顔で言えた。
アズちゃんとカクのおかげだ。二人が居なかったら、私は簡単に馴染むことができなかったかもしれない。
そうして、私の新たな生活が始まった。