あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
放課後。
「アズちゃん、カク、帰ろう」
何の柄もない紅色のランドセルを背負ったアズちゃんに声をかける。
「あー…。んだげんども、カクは…」
「葛西ぐん、日直の仕事残っでるよ」
教室からそろりと出ていこうとしたカクに先生がそう言った。
すると、随分バツが悪そうな顔をしたカクが、黒いランドセルとは反対に先生の方を向く。
「そういえばカク、今日は日直だったね。待っとく?」
「え…あ、いや!先に行くべ!」
妙に挙動不審なアズちゃんに疑念を持つも、大して気にしていなかった。
「海に行くこと、カクは知ってるんだよね?」
「んだ」
「じゃあカク。先に帰ってるね」
「…え…わ、わがった」
そうして私とアズちゃんは教室を出た。