あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
嫌だ。
波も、私たちを脅かすようにして恐怖の舞を躍っている。
目には、もう涙でいっぱいだった。
先に帰ったアズちゃんは無事だろうか。
家族は…皆は…。
そんなこと、今、考えている余裕なんてない。
身の安全を守るので精一杯。
必死だった。
やっと揺れが落ち着いてきた。
もう大丈夫だろうと思って、ゆっくりと立ち上がる。
すると、また来た。
第二波というのがよくわかった。
さっきよりも、大きな揺れ。
揺れと同時にかがみ込む。
目に溜まった涙は溢れ出した。
「いやぁ!!」
そう叫びながら頭を抱えた。
カクだって、大人の男性じゃない。
いくら好きな人だとしても、私を守ることなんてできない。
いや、大人でも、この状況じゃあ、自分のことしか考えられないはずだ。