あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
………長く長く続いた。
長すぎた。
まだ小さく揺れが続く地面の上に立った。
目の前のカクも、呆然と、涙でぐちゃぐちゃであろう私の顔を見る。
こんな時、父や母がいたら。
『大丈夫、もう大丈夫よ』と言って、なだめてくれたかもしれない。
でも、そんな人、どこにもいない。
これからどうする?
そんな目をカクに向けた。
カクも私と同じ目で私を見つめる。
つい先程まで『好きだ』と言っていた空気は、ひとつも残っていなかった。
「あ、危ねぇがら、ゆっぐり帰っか…」
帰る?
私は先生がこの前言っていたことを思い出す。
『まだ余震くるがもしれんがら、気をづげらんしょ!』
確かに、あんなに住宅街が広がるところに行くのは危険だ。
だが、私はその思いを捨てて頷いた。
母達のいるもとへ行きたかった。
無事か確認したかった。
きっとアズちゃんも道の途中で震え上がっているかもしれない。
「ゆっくり…ゆっくり行こう…」
そう言って私たちは進み出した。