あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

余震は続く。
地響きが聞こえる度に心臓が震え上がる。

今度こそ死ぬのではないか。
一昨日と同様、さらに強い揺れが襲うのではないだろうか。

こわい。
どれほど小さな余震でも、そう思った。

地から声が聞こえてくる気がした。

『さあ、もう一度だ。覚悟しておけよ』

私にとって地響きはそのようにしか聞こえなかった。

お願いします。
もう許してください。
もうこれ以上、私たちを追い詰めないでください。

本気でそう思ったんだ。

「救急車はまだ来ねぇのが!」

アズちゃんの前にしゃがみ込む見知らぬおじさんがそう叫ぶ。

でも、周りは皆わかっていただろう。
これほど甚大な被害で、救急車を呼ぶ人は少なくないと。

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