あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

大津波警報がでた今もなお余震は続く。

何度、地震がきたとしても慣れることなどない。

むしろ恐怖は倍増する。

その調子で時はどんどん過ぎていった。
気付くのが遅かった。

「あれ、潮、引いでねぇ?」

お兄さんが海の方を指差してそう言った。

「…来る。皆!逃げっペ!」

おじさんの合図で皆が駆け出した。
でも、どこに逃げれば?
高いところ?
安全なところ?
どこ?
わからない。

私は焦っていた。
みんな焦っていた。

駆け出す方向について行こうとした。
でも。

「か、カク!」

「もう少しだげ…救急車待づ」

私だって、アズちゃんを見捨てて行くことなどできなかった。

「うん…」

子供の考えは甘いんだ。
だから何度も失敗して、後悔して、学んで、次に役立てる。
でも、次がなかったら?
役立てることも、学ぶことすらもできないんだ。

「お前ら!津波来んぞ!はやぐ逃げろ!」
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