あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
皆が去って何分たっただろう。
別の人からそう言われた。
気付いた時にはもう遅かった。
海の方へ駆けて見る。
遠かった。
遠く遠くのところに、明らかに大きな波頭が立っている。
「カク…駄目だよ…逃げよう!!」
さすがにカクも分かっていた。
葛藤の末「逃げっペ」と言って走り出した。
私もカクに続いて走った。
アズちゃんの方を振り向いた時、罪悪感で押し潰されそうになった。
おじさん、この子を運んで。
なんて言葉を思いつくほど機転なんて回らなかった。
自分が助かることに精一杯で。
ただ走ることしかできなかった。
自然を相手とした私たちは、何も出来ない。
無力だった。