あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

「山だ!山さ行くべ!」

カクに手を取られて走る。
カクのランドセルについた鈴が急かすように、リンリンと音を立てる。

周りの景色が流れるように過ぎていく。
まだ呑気に歩いている人も、足の悪そうなおばあさんを支えながら歩く人も、たくさんいた。

走っていてよかった。
大好きな街が半壊しているのを、じっくりと見るなんて耐えられなかったから。

息を切らしながら走った。

カクの足は速くて、ついて行くのに必死だった。




─────ゴォォォォ!!

嫌な音がした。
後ろからどんどん近づいてくる感覚。

バキバキバキッッ!!

メキメキメキッッ!!

聞きたくもない。
耳を塞ぎたかった。
目を瞑りたかった。

でも、後ろのそれはそうさせない。

近づいてくる。

怖くてまた涙が溢れた。
流れ出た涙は、風に乗って後ろに飛んでいく。

涙でぼやけた世界のすぐ向こうに山が見えた。
丘のような山だった。
< 83 / 240 >

この作品をシェア

pagetop