あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「山だ!山さ行くべ!」
カクに手を取られて走る。
カクのランドセルについた鈴が急かすように、リンリンと音を立てる。
周りの景色が流れるように過ぎていく。
まだ呑気に歩いている人も、足の悪そうなおばあさんを支えながら歩く人も、たくさんいた。
走っていてよかった。
大好きな街が半壊しているのを、じっくりと見るなんて耐えられなかったから。
息を切らしながら走った。
カクの足は速くて、ついて行くのに必死だった。
─────ゴォォォォ!!
嫌な音がした。
後ろからどんどん近づいてくる感覚。
バキバキバキッッ!!
メキメキメキッッ!!
聞きたくもない。
耳を塞ぎたかった。
目を瞑りたかった。
でも、後ろのそれはそうさせない。
近づいてくる。
怖くてまた涙が溢れた。
流れ出た涙は、風に乗って後ろに飛んでいく。
涙でぼやけた世界のすぐ向こうに山が見えた。
丘のような山だった。