あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

そこからたくさんの人々が私たちを見ていた。

後ろにまだいる人達のことも見ているだろう。

「逃げで逃げで!!」

「はやぐはやぐはやぐ!」

「きゃあ!」

「走れぇ!!」

その人たちから、私たちはどう映っただろうか。

魔物に喰われかけている可哀想な餌なのだろうか。

「走れぇ!」

「はやぐ!」

走ってる。
速く速く逃げている。

応援なの?
それとも我慢ならず自分の不安な気持ちをこうして出しただけ?

助けて。

わかってる。自分の命が危うくなる行動に出れるわけがないと───。

「だっ!」

変な声を出して転んだ。
私と手を繋いでいたカクも、私につられて後ろへ倒れる。

駄目だ。
助からない。
本当に本当に死ぬ。

初めてだった。
こんなに恐れたこと。

東京にいたら、助かったのか。
お父さんが漁師になりたいなんて、思わなければ良かったのか。

そんなこと考えている暇はない。
ただ後ろを振り返った。
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