あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
濁流の中、されるがままに進んでいく。
今度は波に持ち上げられた。
その勢いのまま、明るい方向へ顔を出そうとする。
バキバキバキ、という音が聞こえた。
必死で何か板のようなものに掴まった。
一瞬息をする。
鼻が痛い。
咳もした。
吐きそうになった。
人の声も聞こえた。
そこに行きたかった。
でも、何故か、そこに行く力はない。
頭がまわらない。
酸欠なのか。
……ちがう。
右脚が。
痛いどころの話ではなかった。
頭がぼうっとしてきた。
板につかまったままどんどん流される。
カクはどこへ行ったの?
皆大丈夫かな。
…まだ。
まだ伝えていないことはたくさんあったのに。
死に……たく………な……───。
地獄絵図の中で私の意識は途切れた。