あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
……─────ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
「うぎゃぁぁぁ…」
ハッキリと聞こえる。
懐かしい泣き声。
白い光に包まれて、ぼんやりとした白色の天井が現れた。
「…あ、せ、先生!」
そういう声が聞こえた。
なにがあったか、ここがどこか、全くわからない。
ただ一定のリズムで鳴る機械音と、雑音のくせにどこか懐かしい泣き声が、耳元で聞こえていた。
とりあえず起き上がろうとした。
でも、全身に力が入らない。
力が入るどころか、全身に激痛がはしった。
「うぅっ…」
呼吸器官の入口には、変なものが取り付けられていて、流れ入ってくる空気が少し苦しい。
「光希歩ちゃん!目が覚めたのね!」
駆け寄ってきた白髪で少しパーマがとれかかっている人は、微かに見覚えのある人。
「おばあ…ちゃん…」
ぎゃあぎゃあと泣く子供をなだめながら涙目を浮かべるのは、間違いなく大阪にいるはずの祖母だった。
「光希歩ちゃん…わかるのね。良かった。本当に良かった…」
どうしたの?おばあちゃん。
ここはどこなの?どうして泣いているの?
そこへズカズカと眼鏡をかけた白衣のおじさんがやってきた。
「良がった。君、一ヶ月も眠ってたんだよ」