あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

眠っていた?一ヶ月?
なにがあったの?

医者と思わしきその人に、酸素マスクというものを外された。

そして。衝撃の事実を知らさせる。

「混乱しでるだろうし、辛ぇと思う。んだけど、これがらリハビリとが、一緒に頑張っぺ」

見せられた。私が失ったもの第一号。

それは綺麗に包帯に巻かれ、その先は存在しなかった。

それを見て、なにがあったか、ハッキリと思い出した。

生きていた。
でも脚を失った。
複雑な気持ちが混じりあった。

そこで再び思い出す。

「お、お母さんは…?…お父さんは?…アズちゃんは…カクは?」

力ない声で、おばあちゃんの方を向いた。

「だ、大丈夫よ。ほら、海光ちゃんもここにいるじゃない」

おばあちゃんは、腕の中で泣き叫ぶその子の顔を私の方へと向けた。

「うぎゃぁぁ……ねんねぇ…」

「…海美…ちゃん」

おばあちゃんが自分の孫と勘違いしている子は、色素の薄い髪の毛を揺らす海美ちゃんだった。

「ほら、海光ちゃんでしょう?おばあちゃん、初めて海光ちゃんに会ったわ」

え?何がどうなっているの?
どうして海光が海美ちゃんなの?
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