あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「ねぇ…教えて…みんな…どこにいるの?」
聞きたくもない結果でも、もしも生きているのなら、飛んで会いにいきたかった。
おばあちゃんは顔をしかめた。
そうして涙を流しながら、この歳にしては珍しいスマートフォンの画面を見せてきた。
『東日本大震災 地震・津波 死亡者 お名前』
そう書かれたサイトだった。
そこで初めて知った。
私の誕生日を〝東日本大震災〟と名付けられたことを。
そのまま下に目を滑らせた。
「…嘘だ」
それは綺麗なパソコン文字だった。
◆浅岡藤之
◆浅岡美由紀
◆葛西陸
◆葛西流一
◆葛西流二
◆葛西涼子
◆岸元泳介
◆浜中梓
カクの名前があった。
カクのおじいちゃんやおばあちゃんの名前も。
お父さんの名前も。
アズちゃんの名前も。
絶望的だった。
じゃあお母さんは?海光は?カクのお母さんは?アズちゃんのお母さんは?
まだ少しの希望にかけて視線をさらに下へと滑らせる。
すると下の方に『行方不明者 お名前』というものがあった。
ないと信じて。
でも興味があって。
確かめたくて。
私は見た。
◆葛西海美
◆葛西美波
◆岸元光
◆浜中絵里子
見たくなかったと、後悔してももう遅い。
この世にいないんだ。
私の家族、大切な友達、その家族も。
みんないなくなっちゃったんだ。
一度に色々なことが起こりすぎた。
私は壊れてしまったんだ。
「いや…いやあ!!」
涙がベッドの上に水たまりを作るほどに流れ落ちる。
その名前の欄の最後に、何もなくなった、私の街の名が書かかれた写真が貼ってあった。