あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

大好きだった海。
あなたは天使だった。

私を日だまりに…みんなに出会わせてくれた。
天使に導かれ、私はカクに会えた。

あなたは天使…だった。

あの日までは。

何故、怒り狂い悪魔になったの?

何故、私たちを引き裂いたの?

出会わせたくせに。

今では、元の姿に…天使の顔を被った姿に戻り、また人々を導き、時に悪魔になるのね。

私たち人間が悪いって言ってるの?

人間が傲慢で自然のコントロールも出来ると思い込んでいたから?

そんな人間に対して怒りをいだいているの?

ごめんなさい。
だから返して。

返してよ。

私の大切な人たちを。
大好きな街を。
楽しかった思い出を!!

まだ言ってないこと、たくさん、たくさんあったのに。

伝えられなかった。なにも!

もっと伝えたいことたくさんあった。

言えてないことたくさんあった!なのに!!

もう、二度と伝えることができない。

「返して…返してよ」

この世にたった一人しかいない、大切な人。

代わりの人なんていない。

行ってきます、と。
行ってらっしゃい、と。

毎日なにも変わらぬやり取りが、一瞬で…ほんの一瞬で途絶えてしまった!
終わってしまった!

これは夢なのではないかと何度思ったことだろうか。

目が覚めて、隣を見たら、まだ愛しい家族が眠っているような気がしてならなかった。

でも、何度朝が来ようと隣を見れば、大きな窓から、何もなくなった世界が、遥か遠く微かに、見えるだけだった。
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