あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
どうして皆、私を残して去っていくの?
私も連れて行ってよ!
視線を落としたそこには、左のものとは全く違う状態の脚がある。
私の命を助けるためには、これを失わないといけないほどだったのだろう。
それほど重症だったのだろう。
一ヶ月も眠っていたのだから。
まるでタイムスリップした気分だ。
意識を置いて勝手に進んでいった時間。
その間に、なんとか見つかった大切な人の亡骸も火葬されてしまった。
「…嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!もう生きている意味がわかんないよ!どうして私は生きてるの!?どうして私だけ助かったのよぉ!」
泣き崩れた。
何度目だろう。
おばあちゃんが駆け寄ってきて、海光も私の声に驚いたように泣き出して。
もう嫌だ。
泣いて泣いて、泣き続けて、体の水分を全部出し尽くして、死んでしまいたかった。
「光希歩ちゃん…っ」
おばあちゃんがハンカチを渡してくる。
そのハンカチから涙が絞り出せるほど、泣いて拭いてを繰り返した。
「うあぁぁぁん…ねんねぇ…ねんねぇ…」
そばで泣く海光のその顔は、あまりにもカクに似ていた。
髪型も身長も性別も違うけれど、少しつり上がった猫目から涙が溢れていて、胸が締め付けられた。
カクに会えた気がした。
カクが私をみて泣いている気がした。
『泣ぐな』
そう聞こえた気がした。
……そうか。
カクが残してくれたんだ。
海光として、私を支えるように、私のもとへ連れてきてくれたんだ。
小学三年生の、理屈の通らない妄想が支えとなった。
「そうだね…海光のために…生きるね…」
気持ちの整理がついたわけじゃない。
辛い記憶は完全には消えない。
それでも私は前を向き始めた。
残された人々が顔を上げ始めたのと同時に。
それから私は、海光と一緒に暮らすことを目標に、リハビリに励んだ。