あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

─────初日は何事も無かった。

急な坂道を必死で登ってたどり着いた学校。
桜はかなり散っており、地面が桃色に染まっている。

「えっとね、先生も新任ではじめましてやねんけど、今日転校生がやって来ました。自己紹介お願いね」

新任のその先生は、私のことをそれほど詳しく説明してくれなかった。

「あ、えっと…福島県から来ました。岸元光希歩です。…よろしくお願いします」

約一年間、同じ年頃の子とあまり関わってこなかった私は、極度のコミュ障と化していた。

いつの間にか、以前の私とは変わってしまっていたんだ。

それでも、視線の元では拍手が聞こえた。
私はホッと胸をなでおろす。

席についた後、始業式にでた。
その後宿題を出し、早くも解散したせいか、誰にも話しかけられることはなかった。
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