恋にはならないわたしたち
「真木、まだか?」
実はイラチかあの男。
小さく息を吐き出して覚悟を決めてフィッティングルームの鏡の扉を開けた。
すぐ前に三池が立っていて瑞穂が仰け反る。
「さすがオレ」
「・・・?」
「似合ってる、綺麗だ」
ぶわっと音がしそうなくらい顔が一瞬で赤くなった。はくはくと声にならない息が口から漏れる。
ご丁寧に瑞穂の脱いだ黒い靴はどこかにやられ、アイボリーの低めのヒールの靴が置かれていた。
着ていた服と靴が入っていると思われるやけに大きなショップの袋をスタッフから渡されると、横からひょいと三池に取り上げられ、手を繋がれて外にでる。
車の助手席に押し込まれ、運転席に三池が乗ってきた。エンジンをかけて瑞穂に視線を向け表情を緩める。
・・・なんだその甘い眼差しは。
思わず両手を伸ばして三池の頬を横に引っ張った。
「・・・・・・あにふんねん」
「三池の皮被ったアンタ誰!?わたしの知ってる三池は無口で無口で無口やった!」
三池が瑞穂の手を両方とも握って外す。