恋にはならないわたしたち
瑞穂に病院に連れて行かれ、案の定食あたりだと診断されて点滴を1本打たれた。
処置室から出ると瑞穂が待合室の椅子で雑誌を読んでいる。
「・・・真木、帰らんかったんや」
「病人ほっぽって帰れるほど薄情ではないんやけど」
瑞穂がすくっとたちあがって雑誌をラックに返した。
「送る。家どこ?」
思わずプッと吹き出した三池を瑞穂が怪訝な顔で見る。
「真木、オトコマエ」
瑞穂が複雑な顔をした。
「それ、よく言われる」
実際、見た目もオトコマエだ。
170センチほどはあるだろう長身、スキニーデニムをはいた足は細すぎず太すぎず、スラリと伸び、白いTシャツの上に黒の格子柄のシャツを羽織って足元はスニーカー。
飾りと言えばショートボブの髪から覗く耳朶に光る小さなシルバーのピアスくらい。
色気があるかと聞かれたら10人中8人はないと断言しそうだけど。
「大阪市内やけど運転大丈夫?」
「あー、大丈夫。運転好きやし」
カラリと瑞穂が笑う。