恋にはならないわたしたち
瑞穂に対して驚くほど身構えない自分がいる。
瑞穂のコンパクトカーの助手席におさまり、ナビをセットした。
「えー・・・ホント市内やね。銀行も近いし」
「よろしく」
不意に瑞穂の手が伸びてきて三池の前髪を掠りおでこに触れる。
「少し熱出てきた?家着くまで寝ててええよ」
どこまでもオトコマエだ。
自分から女の子に自宅を教えるなんて今までだったら考えられなかった。教えたら最後、遠慮なくプライベートエリアまでズカズカと入って来られそうだったから。
危なげなく運転する瑞穂。
運転好きを標榜するだけあってそこらの男よりも上手い。
疲れと、体調の悪さから瑞穂が車を発進させてから暫くして目を瞑った。
「・・・・・・三池くん、三池くん!」
軽く身体を揺さぶられて目が覚めた。
瑞穂が助手席のドアを開けて三池の顔を覗く。
「・・・悪い、本格的に寝てた」
ハッキリしない頭で周囲を見渡すと、自分のマンションが瑞穂の後に見えた。