恋にはならないわたしたち
「なんか可愛いカノジョ連れてたで。社内恋愛やて言うてた」
「ふうん」
それ、今する話題か。
「・・・なに?真木の元カレの話?」
三池、食いついてくんな。
「三池〜、コイツさ、大学時代同じゼミにカレシがいてて、銀行の入社試験一緒に受けたのにコイツだけ受かってん」
気にすんなーーーーそんな声をかけて、最初は鷹揚な態度を見せた男。
なのに徐々に2人の仲がギクシャクしだし、最後には別れを告げられた。相手が第一希望の金融ではなく、中堅のメーカーに就職が決まったことが決定打だったのかもしれない。
『このままずっとお前にバカにされっ放しなんて我慢できない』
そんなことしたこともなかったし、寧ろ就職が決まったことを心から喜んでいたのに。
崎田のせいでつまんないこと思い出した。
暴露するだけして、崎田がトイレに立つ。
「・・・・・・ちっさい男だな」
「崎田のこと?」
「違う、真木の元カレ」
「ああ、はは・・・」
かなり飲んでいるはずなのに顔色ひとつ変えず瑞穂を見据える瞳には何の感情も伺えない。