恋にはならないわたしたち


不審に思いながら瑞穂が紙袋を開けると、瑞穂の昨日着ていたワンピースの他に濃いグレーのスーツと下着一式、ご丁寧にパンストまで入っている。


「・・・・・・何、これ?」


「お前の着替え。これで明日もバッチリや」


「・・・そういえばこのワンピースのお金も払ってないし・・・いくら?」


「要らない」


「そんな訳にはいかへん、貰う理由がない」


三池が瑞穂の隣に身体の正面を瑞穂の方に向けて座る。


「やる理由はある」


「どんな?」


「今日付き合わせたし」


「嘘吐かせたし?」


「嘘は吐いてへん」



すぐそこにある整い過ぎた顔を瑞穂が睨んだ。



「お見合い回避の為にわたしを利用したくせに」


「利用したのは悪かった、けど嘘吐いた訳やない」


三池が何を言っているのか、瑞穂には分からなくなってくる。結局利用されたという事実だけが瑞穂の心を沈ませる。


「お前、オレのことが好きやろ」


さっきも車の中で言われた言葉。


瑞穂の恋心を、この男は感じとっていたのか。


瑞穂の隠して捨てたつもりの恋心を利用して、モノで釣って黙らせようとでもいうのか。
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