恋にはならないわたしたち
あわあわと焦る瑞穂の背中に長い腕がまわされる。
頬と頬がくっついてひんやりした感触に瑞穂が少し落ち着いた。
「スーパー庶民でも何でもええ、瑞穂が瑞穂やったらそれでええよ」
コクリと瑞穂が息を呑む。
「ジジイに言うたことはホント。結婚大前提で付き合おか」
三池の言葉を頭の中で何度も反芻しながら、囚われた腕の中で瑞穂が身体を捩り、三池との間に隙間をあけて自分の手が動くようにした。
好きを諦めなくていい?
三池と一緒にいてもいいの?
じわじわと瑞穂の心に湧き上がる喜び。
自分が叩いた頬に手を当てる。
「・・・・・・ごめん、痛かった?」
「馬鹿力」
三池が唇の端を少し上げ、瑞穂との顔の距離を詰めてくる。
この次に起こることを期待して、目を閉じた。
微かな吐息を唇の上に感じ、あと少しで重なる・・・・・・ところで瑞穂が叫んだ。
「あーーーーーーーーーーーっっ!!」
思いっ切り三池を突き飛ばし、自分のバッグからスマホを出す。
「・・・・・・・・・・・・なに?」