恋にはならないわたしたち
女らしいって言われた。
普段パンツスーツばかりだから今日は精一杯お洒落をしてきたつもりだ。
僅かに残った恋心の欠片が気持ちを浮き立たせる。
何気ない言葉につい反応してしまう。
諦めたはずの手の届かない男に未だときめく自分の馬鹿さ加減に呆れる。
「瑞穂ちゃん」
不意に呼びかけられる声に意識が引き戻された。
「あ、涌井くん」
ナイフとフォークを置いて、傍らに立つ人に挨拶をするために瑞穂も立ち上がる。
少しタレ目の優しい印象。
細めの均整のとれた身体が170センチ超の身長を実際より高く見せていて、カテゴリーで分けるなら間違いなくイケメンに入る。
披露宴も中盤、片手にビールの瓶を持っているところを見ると、他のテーブルを周ってきたようだ。
「終わったらロビーのカフェで待ってるよ。二次会の司会のヤツと最後の打ち合わせしよう」
「分かった。色々ありがとう、わたしも幹事なのにちっとも役に立たへんでごめんね」
「いやいや、ちゃんとしっかり働いてくれてるよ」
じゃ、また後でと艶やかな笑顔を残し新郎の両親が座るテーブルに歩いて行った。途端に同じテーブルに座る女子たちが色めき立つ。
「ちょ、瑞穂!何、あのイケメン!」