恋にはならないわたしたち
瑞穂の仕事は終わったと一息つく。
ちょっと飲み過ぎたなーーーー・・・立食形式の会場の片隅で 目立たぬように椅子に腰掛けた。
披露宴で勧められるままそこそこ飲んで、また二次会で勢いに任せて飲んでしまっていた。
会場の真ん中、三池が沢山の女の子に囲まれている。涌井くんの周りにも女の子がいっぱいだ。
狩られてる、狩られてる。
涌井くんは兎も角、あんな気の利いたことも言えない男、どこがいいんだか。
笑いも取れない男なんて大阪の男として失格だ、ばぁーか。
女の子の群れから一人、男性が抜けてこちらに歩いてくる。
「瑞穂ちゃん、大丈夫?」
「・・・大丈夫」
声をかけてくれる人に少し落胆する。
最低。
優しくしてもらって、それが自分の思う人でなかったからガッカリするなんて。
心配そうな声色に無理に元気そうに椅子から立ち上がった。
「涌井くん、ごめん。幹事がこんな隅っこで休んでたらアカンよねーーーー」
履き慣れない5センチのヒールが足元を怪しくする。思わずふらついて転びそうになった瑞穂の腕が引っ張られ誰かの胸で受け止められた。
セーフ・・・と安心したところまではしっかり覚えている。