恋にはならないわたしたち


大丈夫か?と優しい声が耳朶を撫でる。
大丈夫〜と応える自分の声が遠くの方で聞こえる。


柔らかい、何処かで嗅いだことがある爽やかな香りがする場所に身体が沈められる。




何かを囁かれ、曖昧に返事をした。



身体をしめつけているものを薄皮をはがすように取り去られ、解放された心地良さに大きく息を吐く。



素肌に熱いものが触れる。



気持ちいいーーーーーー・・・



離れていかれるのが嫌で、その熱い何かをぎゅうっと両腕で引き寄せてそのままゆらゆらと揺られるように身を任せたーーーーーー。



◇◆◇◆




ーーーーーーーーやらかした。



27年生きてきて、多分いちばんの失敗だ。


目の前には美しい筋肉のついた、肩甲骨もくっきり、滑らかな肌の背中。


その広さと、丸みのない肩のラインは紛れもなく男性のもの。


規則正しい呼吸の音が静かな部屋に響く。




うーん・・・



ダブルのベッド。
何となく見覚えのある部屋。


何も纏っていない男女。

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