私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「後悔なんかしてないです」

「…」

「出会えたこと、買い取ってくれたこと。守ってくれたこと。今なら、よかったって言えます」

こんな気持ちになったことも、後悔したくない、な…。

その言葉は飲み込んで、季龍さんに笑みを向ける。

「季龍さんの“使用人”になれてよかった」

「…そう、か」

少しだけ離れた距離を詰められる。

「俺も、後悔してねぇよ」

「…はい」

包まれるように抱き締められて目を閉じる。

使用人なら、こんなことしないのに。

頭の中で自分の声がする。

わかってる。…わかってるよ。

でも、もう少しだけ、もう少しだけ。このままでいさせて…。

何もかも不完全のまま、誤魔化して過ごすしかない。それでも、許されますか…?
< 109 / 407 >

この作品をシェア

pagetop