私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「後悔なんかしてないです」
「…」
「出会えたこと、買い取ってくれたこと。守ってくれたこと。今なら、よかったって言えます」
こんな気持ちになったことも、後悔したくない、な…。
その言葉は飲み込んで、季龍さんに笑みを向ける。
「季龍さんの“使用人”になれてよかった」
「…そう、か」
少しだけ離れた距離を詰められる。
「俺も、後悔してねぇよ」
「…はい」
包まれるように抱き締められて目を閉じる。
使用人なら、こんなことしないのに。
頭の中で自分の声がする。
わかってる。…わかってるよ。
でも、もう少しだけ、もう少しだけ。このままでいさせて…。
何もかも不完全のまま、誤魔化して過ごすしかない。それでも、許されますか…?