私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
琴音の容体は、ここに連れてきた直後こそ高熱を出したりしたものの、順調に回復を見せた。
傷をおおっていた包帯が外れ、点滴が外れ、ガーゼが外れ、人工呼吸器が外れ…と徐々に怪我は治癒していった。
だが、それと同時に琴音の体重は減少を続け、元々細かった手足はさらに細く、骨が浮き立つようになった。
そして、“治療”は徐々に減っていき、残ったのは毎日の“介護”だった。
怪我が全て完治したとき、医者が出来ることを失った瞬間で、琴音を目覚めさせる医療的な手段を失った。
介護はあくまでも身の回りの世話をするだけで、目覚めさせる手段じゃない。
このまま一生目覚めない可能性は増すばかりだ。
胃ろうに食事を入れ、琴音の顔に視線を戻す。顔色ひとつ変えない琴音にため息を溢す。
「…琴音、まだ寝足りないのか?」
「…」
「もう、十分寝たんじゃないのか?」
「…」
「なぁ、琴音…。もう、俺の顔も見たくないってか?」
自嘲的な笑みが浮かぶ。
頭を振るう。違う。琴音が悪い訳じゃない。…悪いのは、傷を負わせた俺だ。